札幌市は、2018年北海道胆振東部地震(清田区震度5強)で多数の家屋損壊と宅地崩壊が起きた清田中央地区(清田団地)について、地震災害の発生メカニズムを解明し、再度の地震災害を防止する地盤強化対策をまとめました。

 市(建設局市街地復旧推進室)は地域住民の理解を得たうえで、令和3年度(2021年度)に現地測量と詳細設計を行い、令和4年度(2022年度)に大掛かりな対策工事に着手する予定です。

2018年地震で被害が集中した地区(赤い楕円で囲んだ区域)

2018年地震で発生した清田中央地区の地割れ

 胆振東部地震で、清田区内は全域で家屋損壊、地盤沈下、隆起などの被害が発生しました。特に、里塚、美しが丘、里塚霊園隣接地区、清田中央地区の住宅街4カ所は、宅地崩壊、家屋損壊の被害が多発しました。

 このうち、里塚、美しが丘、里塚霊園隣接地区の3地区は、地盤を強化する対策工事が着々と進み、終了した地区もあります。しかし、清田中央地区だけは手付かずのままでした。

 今回、札幌市が清田中央地区の対策工事の方策をまとめたことにより、家屋損壊が多発した清田区内4地区すべてで地盤強化対策が行われる見通しになりました。

■過去50年で3回も 地震被害多発地区

 清田中央地区の清田7条2丁目、同3丁目、清田6条3丁目界隈は過去50年間で3回も地震による家屋損壊と宅地崩壊の被害が繰り返し発生しています。

1968年地震の被災集中地区(青い部分)、2003年地震の被災集中地区(緑の部分)、2018年地震の被災集中地区(赤い点線)

 1968年(昭和43年)の十勝沖地震、2003年の十勝沖地震、そして2018年胆振東部地震と3回も地震災害を繰り返しているのです。1982年の浦河沖地震でも被害が発生したという記録もあり、これを含めると過去50年間で4回もの地震被害が発生したことになります。

 この地区をこのままにはできないと、市は地震被害を繰り返す前述の区域で地形調査(盛土、切土などの地形的な特徴)、地質調査(ボーリング調査による地盤の強さ)、地下水調査(地下水位の状況)を行ってきました。

■地下水が集まる! 谷埋め盛土で被害集中

団地造成の経緯。山(切土)を削って、その土で沢(川)を埋めて宅地造成した

 市の調査と分析によると、当該区域は昭和34年(1959年)頃より宅地開発が始まり、山を削り、沢を埋めることで宅地造成が進められました。盛土は、旧谷筋に沿って谷を埋めるように分布しています。そして、この昔の沢を埋めた谷埋め盛土部分で被害が集中していることを確認しました。

青系色が切土(山の部分)、赤系色が盛土(谷や川だった所)を示している。青い線が昔の沢や川筋。赤い楕円の線は、2018年胆振東部地震の被害集中地区を示す。旧沢筋・旧川筋の盛土箇所に沿って被害が集中していることがわかる。

 さらに、もともと沢だった箇所は地形的に地下水が集まりやすく、現在も地下水位が高い状態(地表面から1m~1.5m以内)にあることが分かりました。被害が集中した谷埋め盛土部分は、地下水位が高くなっているとのことです。

赤系色の所は地下水位が高い(地表面に近い)、黄色と緑は地下水位がやや高いことを示している。無色の所は地下水位が低い(地表面から深い)ところを示している。被害が集中した谷埋め盛土で地下水位が高く(赤色と黄色)なっている

■地滑り被害が発生した

 こうしたことから、この区域の被災メカニズムは①2度~5度の高低差のある傾斜地であること②盛土の中に比較的緩い地層(火山灰質土)が存在していること③旧沢地形であり、地下水が集まりやすく、地下水位が高くなっていること(地表面から浅い位置に地下水が存在)-という3つの複合要因によって「地滑り被害が発生した」と、市は分析しました。

清田中央地区で地滑り被害が発生したメカニズム

 清田中央地区では、2018年胆振東部地震において「地表面における顕著な液状化は確認されなかった」と市は分析しています。被害の発生は「地下水位が高く、傾斜した緩い盛土を要因とした地滑り被害」というのが市の解析結果です。

■地下水位を下げる工事を実施

 こうした解析結果から、市は再度災害防止対策として、区域内の地下水を下げる「地下水位低下工法」という工事を行うことにしました。

地下水位を低下させる工事のイメージ図

 この工事は、区域内の道路下に有孔管という特殊な管(穴の開いた管。地中の地下水を、土を通さずに水だけろ過するように集める管)を埋め、盛土全体の地下水位を低下させるというものです。有孔管で集めた地下水は清田川に排水します。

 市の分析では、地下水位を地表面から3m~3.5mに低下させることで、地滑り抑制効果が期待できるといいます。

 また、過去の地震で、この地区において液状化が発生したという記録がありますが、この地下水を下げる工法は、液状化を軽減する効果もあるそうです。

 ただ、急激に地下水位を下げると、地表面の沈下が起きる可能性があるため、時間をかけて徐々に地下水位を低下させるそうです。

有孔管の設置位置(案)。詳細は検討中

 道路に有孔管を埋設する「地下水位低下工法」という工事は、目下、美しが丘地区でやっている工事と同じです。

■600戸に説明資料を配布

 市は、以上の情報について、里塚や美しが丘地区のように住民説明会を開催して地域住民に説明する考えでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大のため説明会の開催ができません。

 そこで市は、清田中央地区の被災メカニズムや対策工法を記した説明資料(概要版)を12月4日(金)、対象区域約600戸に全戸配布しました。

再度災害防止対策の範囲と関係町内会(6町内会)

 さらに、「詳しく知りたい」という人のために、より分かりやすく書いた詳細版資料を清田中央まちづくりセンターに置きました。これはだれでも自由に閲覧できます。

 また、札幌市役所ホームページにも資料を掲載しています。分かりやすく解説した動画もアップしました。いずれも、こちらからご覧になれます。

■12月13日、15日 個別相談会開催

 また、12月13日(日)10時~16時と、12月15日(火)14時~20時の2回、清田中央まちづくりセンターで、個別相談会も実施します。密を避けるために完全予約制です。予約は札幌市建設局市街地復旧推進室の専用電話(TEL 090-9842-9377)へ。

■今後のスケジュール

 今後のスケジュールは、令和3年度(2012年度)に現地測量と詳細設計を行い、令和4年度(2022年度)に対策工事を本格着手することになります。工事は令和5年度(2023年)までかかる可能性もありそうです。

 

「ひろまある清田」より転載